ご入学おめでとうございます!
本日、本校講堂にて新高第78回生入学式が挙行されました。
式 辞
3年に亘るコロナウイルスとの闘いにもようやく出口が見え、例年よりも開花が遅れた学院の桜も美しい花びらから力強い新緑の若葉へと装いを変えたこの春の良き日に、諫早商工会議所前会頭 黒田隆雄様、諫早北ロータリークラブ会長 辻登志美様、鎮西学院校友会会長 西川亨様を始め、多くのご来賓の皆様並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、2023年度の入学式をコロナ前と変わらぬ形で盛大に挙行できますことを、心より御礼申し上げます。
晴れて鎮西学院高等学校への入学を許可された320名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本校教職員及び在校生を代表して心より歓迎申し上げます。
本校は1881年、アメリカ人宣教師CSロング博士によって設立され、今年創立142年目を迎える歴史と伝統ある、長崎県央地区では唯一のキリスト教主義教育を行うミッションスクールです。
今から78年前の1945年、当時は第2次世界大戦中で、ミッションスクールは敵国宗教教育を行う学校として軍部から目の敵にされ、学校に配属された軍人から何かにつけて露骨に嫌がらせや干渉を受け、生徒一人一人の人権など全く無視されていた中、当時の鎮西学院の校長であった西条寛雄先生は、当時の入学式の式辞の中で「私たちは皆さん一人ひとりを大切にします」と軍人の目の前で言われました。迫害の中にあっても堂々とそう言えた先生を私は誇りに思います。だから私も、その思いを受け継ぎ、「我々教職員一同は皆さん一人ひとりを神様からの賜物として大切にします」ということを、全教職員を代表して、まずお伝えしたいと思います。
さて、入学式に当たって、私が新入生に毎年必ず伝えていることが3つあります。
1つ目は、先ほど宗教主任に読んでもらった「聖書」の中に「あなたが私を選んだのではない。私があなたがたを選んだ」とあるように、皆さんは単なる偶然ではなく、目に見えない不思議な力に導かれ、今ここにいるということです。創立者ロング先生は、今から143年前、30歳という若さで、アメリカから、船で2ヶ月近くの歳月をかけて、日本の若者にキリスト教教育を行うことを目標としてやってこられました。
そうしてまかれた一粒の種が芽を出し、花を咲かせ、実を結んだものが、今のこの鎮西学院なのです。皆さんは、そのような神様からの使命(つまりミッション)を受けたロング先生の意志を継ぐ者の一人として、今この学院にいるのです。そのロング先生ですら、本来はアフリカへの勤務を希望されていたのに、不思議な力に導かれて日本の長崎にやってきたのです。だから、皆さんもここにいることを偶然ではなく、宿命としてとらえ、この学院の一員であることに誇りと責任を持って過ごし、ロング先生が掲げた建学の精神である「品性高潔なるクリスチャンジェントルマン」となることを目指してほしいと心から願います。
2つ目は「自導自治」の態度を身につけてほしいということです。「敬天愛人」を本校の校訓に定めた第15代院長の川﨑 升先生は、92年前の長崎新聞において、「人の人たるゆえんは肉塊にあらず、機械にあらず、自導自治の力を有する人格にありと見るために、これを完成する工夫と努力とがわが学院教育の特色をなすことになる」と書かれています。つまり「自ら目的を立て、自ら方法を選び、事を成していってこそ人間であり、そういう人間を育てることが学院の教育の特色なのだ」とおっしゃられているわけです。
今は世界の距離が縮まり、昔であれば一地域にとどまっていたような問題が、世界規模の影響を与えるような時代になっています。我々は日本に住んでいますが、同時に地球に住む地球人でもあります。だからこそ皆さんには、常に視野を広くもち、自分の周囲だけでなく世界に目を向け、自分でものを考え、自分で解決法を見つけ出し、必要であれば変化することをいとわないような積極的・能動的でかつ柔軟な姿勢を身につけてほしいと思っています。それが「自導自治」ということです。
3つ目は「先ほど宗教主任に読んでもらった聖書の後半部分に「私たちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです」とあるように、「目に見えないものを見て、感じ取れるような人間」になってほしいということです。人はつい、お金や宝石、ブランド品のような高価で形あるもの、手に取って見えるものに価値を置いてしまいがちですが、世の中には実際には目に見えないものの方が大切なことがたくさんあります。愛・友情・優しさ・思いやりなどです。
本校は、高等教育機関である以上、必ずしっかりと勉強させます。部活動も思い切りやらせます。しかし、そこから学んだことを活かすも殺すもその人次第です。だから、学んだことを活かせるように、キリスト教の教えに従って、心の部分の教育に大きく重点を置いています。そして見えないものを見ることができるようになることにより、その人の人生はより豊かで実り多いものになっていくと確信しています。
さて、来週から全校一斉の授業日となり、2023年度が本格的にスタートします。今年の高校のスローガンは「鎮西Way~神様が喜ぶように」です。物事に迷った時に、目先の利益ではなく、正義によって物事を見極め、周りに流されることなく神様が喜ぶように行動できる人間となってほしいという思いを込めました。新入生の皆さんも鎮西学院の一員として、そのように物事を考えられるようになっていってください。そして学院の更なる発展に力を貸してください。その活躍を大いに期待しています。
最後になりましたが、保護者の皆様方、改めまして本日は真におめでとうございます。また、数ある高等学校の中から本校を選んでいただき心より感謝申し上げます。ご成長され、本校の制服に身を包んだお子様方をご覧になられて感無量のことであろうと拝察いたします。私どもは先ほど申しましたとおり、お子様方を神様からの賜物として全身全霊をかけて、大切にお預かりいたします。
しかし同時に、在学中に18歳を迎え、選挙権を持つ成人となるこの生徒たちを、3年後から逆算しての指導をする責任もあり、時には中学校時代と比べると少々厳しく、理解しにくい指導もあるかもしれません。そういう時は遠慮なくご相談ください。誠実にお答えいたします。
我々教職員の合言葉はStudents First!です。この言葉は、教師が、自分の面子や建前よりも生徒の思いを優先し、本音で語り合える関係を作る、ということです。生徒のご機嫌取りではありません。生徒のためと思えば、例え一時は嫌われるとわかっていても注意し、きちんと叱ります。それが本当のStudents First!だと思っています。このように、5年後・10年後を考えて指導する我々とその思いを是非共有していただき、生徒の成長のため、同じ方向を見て協力し合って進んでいただければ幸いに存じます。
落ち込んだ経済や、ロシアのウクライナ侵攻による国際情勢の緊張や物価高など、今後の世界には不安が多いことは否めません。しかし、こうした様々な問題から逃げることは誰にもできません。だからこそ私は、そのような中であってもこうして出会えた皆様方とのご縁を神に感謝し、新入生のこれからの3年間の学校生活が、充実した明るいものとなるよう最善の努力を行うことをお誓い申し上げ、この困難の先に明るい未来が必ず待っていると信じ、共に乗り越えていきましょう、とお伝えして、新入生に対する式辞といたします。
2023年4月7日 鎮西学院高等学校 校長 川﨑 健