ご入学おめでとうございます!
本日本校講堂にて新校第79回生入学式が挙行されました。
式 辞
3年半に亘ったコロナウイルスとの闘いもようやく終わり、例年よりも開花が遅れた学院の桜もあっという間に装いを変えて新緑の緑となり、恵みの雨が降ったこの春の良き日に、諫早北ロータリークラブ会長宮田茂樹様、学校法人鎮西学院前理事長栗林英雄様を始め、多くのご来賓の皆様並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、2024年度入学式を盛大に挙行できますことを、心より御礼申し上げます。晴れて鎮西学院高等学校への入学を許可された286名の新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本校教職員及び在校生を代表して心より歓迎申し上げます。本校は1881年、アメリカ人宣教師CSロング博士によって設立され、今年創立143年目を迎える歴史と伝統ある、長崎県央地区では唯一のキリスト教主義教育を行うミッションスクールです。しかし、長いからこそその歴史の中には学院の存続の危機が何回もありました。特に今から79年前の1945年8月9日、長崎市に投下された原子爆弾によって、当時西日本一と称されていた竹の久保にあった校舎は壊滅的な被害を受け廃校止む無しとされていました。しかし、その当時院長であった千葉胤雄先生は何としても学院を存続させるという信念の下、Learning by doing「労働によって学ぶ」という新しい教育理念を打ち出し、校舎を諫早に移し、学院はその斬新な教育理念のもと不死鳥の如く復興を遂げ、今では全校生徒920名を超える大きな学院となりました。そのような数々の大きな危機に直面しても、歴代の鎮西学院の校長先生たちは常に「私たちは皆さん一人ひとりを大切にします」とおっしゃられ続けてきました。そういう多くの先輩たちの思いをしっかりと受け継ぎ、私も本日「我々教職員一同は皆さん一人ひとりを神様からの賜物として大切にします」ということを、全教職員を代表して、まずお伝えしたいと思います。
さて、入学式に当たって、私が新入生に毎年必ず伝えていることが3つあります。
1つ目は、先ほど宗教主任に読んでもらった「聖書」の中に「あなたが私を選んだのではない。私があなたがたを選んだ」とあるように、皆さんは単なる偶然ではなく、目に見えない不思議な力に導かれ、今ここにいるということです。創立者ロング先生は、今から144年前、30歳という若さで、アメリカから、船で2ヶ月近くの歳月をかけて、日本の若者にキリスト教教育を行うことを目標としてやってこられました。それは当時としては正に命がけの行動でした。
そうしてまかれた一粒の種が芽を出し、花を咲かせ、実を結んだものが、今のこの鎮西学院なのです。皆さんは、そのような神様からの使命(つまりミッション)を受けたロング先生の意志を継ぐ者の一人として、今この学院にいるのです。そのロング先生ですら、本来はアフリカへの勤務を希望されていたのに、不思議な力に導かれて日本の長崎にやってきたのです。だから、皆さんもここにいることを偶然ではなく、宿命としてとらえ、この学院の一員であることに誇りと責任を持って過ごし、ロング先生が掲げた建学の精神である「品性高潔なるクリスチャンジェントルマン」となることを目指してほしいと心から願います。
2つ目は「自導自治」の態度を身につけてほしいということです。「敬天愛人」を本校の校訓に定めた第15代院長の川﨑 升先生は、93年前の長崎新聞において、「人の人たるゆえんは肉塊にあらず、機械にあらず、自導自治の力を有する人格にありと見るために、これを完成する工夫と努力とがわが学院教育の特色をなすことになる」と書かれています。つまり「人間は肉の塊や機械とは異なり、自ら目的を立て、自ら方法を選び、目標を達成するという自導自治の力を有する人格があるからこそ人間なのだと考えているので、その人格を完成するために工夫を凝らし努力することが学院の教育の特色なのだ」とおっしゃられているわけです。
今は世界の距離が縮まり、関係は複雑化し、今回の新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻のように、一国一地域に起こった問題が、世界中に影響を与えるような時代になっています。我々は日本に住んでいますが、同時に地球に住む地球人でもあります。だからこそ皆さんには、常に視野を広くもち、自分の周囲だけでなく世界に目を向け、自分でものを考え、自分で解決法を見つけ出し、必要であれば変化することをいとわないような積極的・能動的でかつ柔軟な姿勢を身につけてほしいと思っています。それが「自導自治」ということです。
3つ目は「先ほど宗教主任に読んでもらった聖書の後半部分に「私たちは見えるものではなく、見えないものに目を注ぎます。見えるものは過ぎ去りますが、見えないものは永遠に存続するからです」とあるように、「目に見えないものを見て、感じ取れるような人間」になってほしいということです。人はつい、お金や宝石、ブランド品のような高価で形あるもの、手に取って見えるものに価値を置いてしまいがちですが、世の中には実際には目に見えないものの方が大切なことがたくさんあります。愛・友情・優しさ・思いやりなどです。
これらのことを念頭に置いて本校では理想とする生徒像を「品性高潔で、自導自治の精神を有し、目に見えない大切なものを見ることができるような生徒」と定めています。
本校は、高等教育機関である以上、必ずしっかりと勉強させます。部活動も思い切りやらせます。しかし、そこから学んだことを活かすも殺すもその人次第です。だから、学んだことを活かせるように、キリスト教の教えに従って、心の部分の教育に大きく重点を置いています。そして見えないものを見ることができるようになることにより、その人の人生はより豊かで実り多いものになっていくと確信しています。ですから新入生の皆さんはこの理想の生徒像に一歩でも近づくようにこれからの3年間しっかりと学院に根を下ろし、頑張っていってほしいと願っています。
さて、明日から全校一斉の授業日となり、2024年度が本格的にスタートします。今年の高校のスローガンは「鎮西Sensation~巻き起こせ鎮西旋風!」です。公立高校の入試変更もあり、少子化もあり、様々な社会不安もある中で、「鎮西学院ここにあり!」という活躍をして皆で学校を盛り上げて元気いっぱいに過ごしていこうという思いを込めました。新入生の皆さんも鎮西学院の一員として、一人一人が元気を出して学校を盛り上げるのに一役買ってください。そして学院の更なる発展に力を貸してください。その活躍を大いに期待しています。
最後になりましたが、保護者の皆様方、改めまして本日は真におめでとうございます。また、数ある高等学校の中から本校を選んでいただき心より感謝申し上げます。ご成長され、本校の制服に身を包んだお子様方をご覧になられて感無量のことであろうと拝察いたします。私どもは先ほど申しましたとおり、お子様方を神様からの賜物として全身全霊をかけて、大切にお預かりいたします。
しかし同時に、在学中に18歳の成人となるこの生徒たちを、3年後から逆算して指導をする責任もあり、時には中学校時代と比べると少々厳しく、理解しにくい指導もあるかもしれません。そういう時は遠慮なくご相談ください。誠実にお答えいたします。
我々教職員の合言葉はStudents First!です。この言葉は、教師が、自分の面子や建前よりも生徒の思いを優先し、本音で語り合える関係を作る、ということです。生徒のご機嫌取りではありません。生徒のためと思えば、例え一時は嫌われるとわかっていても注意し、きちんと叱ります。それが本当のStudents First!だと思っています。このように、5年後・10年後を考えて指導する我々とその思いを是非共有していただき、生徒の成長のため、同じ方向を見て協力し合って進んでいただければ幸いに存じます。
落ち込んだ経済や少子高齢化、国際情勢の緊張や物価高など、今後の日本には不安が多いことは否めません。しかし、こうした様々な問題から逃げることは誰にもできません。だからこそ私は、そのような中であってもこうして出会えた皆様方とのご縁を神に感謝し、新入生のこれからの3年間の学校生活が、充実した明るいものとなるよう最善の努力を行うことをお誓い申し上げ、この困難の先に明るい未来が必ず待っていると信じ、共に乗り越えていきましょう、とお伝えして、新入生に対する式辞といたします。
2024年4月8日 鎮西学院高等学校 校長 川﨑 健